−：（質問：以下 − と記載）
「３９」の演出についてはじめにお聞きしたいと思います。初めての法廷劇となると思いますが、ヒントになったものはありますか？
森田：（森田監督：以下 森田 と記載）
はい、３９に関しては、法廷劇ということで どうやって法廷の中の演出を今までの映画と変えていくかということがポイントでした。
やはり法廷の中だと、カメラの構図が一定になってしまいますので、それをアクションぽくドラマチックに、カメラワークとして出来ないかと考えました。
それから、芝居のことも。裁判長らしいとか、検事らしいとか それに弁護士らしいとかパターン化したセリフがありますよね。それを、裁判は人間がやっているんだということを、そこを細かく演出したかったですね。
−：樹木希林さんが演じた弁護士とかですね。
森田：ええ、こんな人達が、やっている訳ないなということを思う方もいるかもしれませんが。実際、裁判にいくとかなりユニークといいますか、いろいろな方がいたりしますので。その点では、実際に裁判所に行ったことが勉強になったと思います。
−：「３９」の鈴木京香さん、「黒い家」の大竹しのぶさんという二人の主演女優が、色んなところで女優賞を受賞されていますし、「３９」の鈴木京香さんなどはこの作品で女優に目覚めたというお話も聞いています。
監督から見た、お二人の芝居の違いなどをお聞かせ下さい。
森田：そうですね、鈴木さんと大竹さんの違いは年齢の違いということもあると思いますね。やはり、大竹さんの場合は色々な事が自分の経験になっていますから、だから、ある種のテクニックを自分の中に持っていますよね。
鈴木京香さんの場合はまだまだそれが少ないから、こういう喋り方をしなさいと徹底的に教え込まないとなかなか出来ないんですよね、そして、こういう性格だということをね。そういう点では、鈴木京香さんの方が時間が掛かりましたけど、その代わり彼女は粘り強いと言うか、吸収力もすごかったですね。
大竹さんの場合は天才的な芝居ですよね。
−：ええ、「黒い家」の大竹さんの演技には、驚きを通り越して感動してしまいましたけど。
−：「３９」も「黒い家」もサイコパスを扱った映画と言えますし、ある一面ではどちらもサスペンス映画と言うことも出来ると思いますが、監督の「３９」から「黒い家」へのアプローチの違い、や思いがありましたらお聞かせください。
森田：「３９」が昨年公開されて、「黒い家」がすぐその後だったんですよね
それで「３９」が面白い映画になったと思ったし、自分でもやったという気持ちだったんで、この「３９」と同じ年に「黒い家」をやるってことは、すごく怖かったんですよ（笑）
−：私たち観客としては、「３９」を観てから「黒い家」というのはとても楽しみでしたね（笑）
森田：だから、そうい言った意味では、「３９」のスタッフから変えたりしたんですよね、カメラマンを変えたり、照明を変えたりとか「３９」に対してライバル意識を持たせたんです、スタッフに。それに自分の中でもタッチを違えたということがかえって功を奏しました。
−：さきほど、ロビーで「黒い家」の音だけを聞いていましたが音楽も素晴らしいですね。
森田：ええ、音楽も素晴らしいですよね。
−：以前フォーラムの特設会議室でも「（ハル）」が話題になり、監督にもお世話になりました
監督は、凄く斬新なアイデアと緻密な演出で「（ハル）」を作られた後、僭越ながら一段とスケールアップされたように思うのですが、監督ご自身では「（ハル）」以降の変化というのを感じられますか。
森田：それは大きいとおもいます。「（ハル）」を撮ったことでふっきれたんですよね。自分がやらなくてはいけない仕事といいますか、他の監督には出来ないものを自分はどんどんやっていかなくてはならないんだと。
そして、より新しいものを自分の中で冒険していかなくてはいけないんだということを思いました。
−：次にどのような映画を撮る予定ですか？
森田：これだけ暗い時代だと言われていますので、２１世紀にむけて明るい面白い映画を撮ってみたいですね。
−：今注目している日本の映画作家は誰ですか？また、俳優は誰ですか？
森田：そうですね、映画監督だと誰と言ってしまうと、自分も言われないと悔しいですし（笑）。
ともかく、プロモーションビデオを撮っている監督、それにＣＭを撮っている監督、そいう方々は編集とか音の入れ方が旨いので、そういう点ではその様なジャンルの方々を注目しています。
−：本日はお忙しい中、インタビューにお時間を割いていただきありがとうございました。
森田：フォ−ラムのみなさんに、よろしくお伝えください。
2000年２月６日 ヨコハマ映画祭会場にて
インタビュアー：OSONO
この度のインタビューに際し、森田監督はもちろんのこと森田事務所の大塚様には早くからスケジュールの調整にご尽力いただきこの場を借りてお礼を申し上げます。
短い時間でしたが、初めに挨拶をした時の森田監督の笑顔も忘れられませんし、インタビュー時の力強い声での迷いのない回答等、森田監督の素晴らしさを堪能できた一時でした。