ｲﾝﾀﾋﾞｭｰ記事（3/3）　　　

−　配役は監督が決めたのですか

望月　基本的には私の方で決めました。

−　Ｌｅａｄの四人を使おうと想ったのは、何か考えがあったのですか

望月　キャスティングに悩んで劇団などをあたっている時に話があり、「四人にあって、かまちくんを決めてくれ」ということでした。

会ったら四人とも良かった。僕としては劇団の方より良く見えました。

デビューして２ケ月ということで、とっても素直だし、僕の方からお願いしたいと言いました。「かまちくんを」と言ったが、引きこもり、虐められる子役にも使いたいが良いかと聞きました。実際そういう役はアイドル的役じゃ無いし、汚い役ですからね。

汚い役はやりたくないと言うかと想ったら、そうでは無くて良いですよという事で、その点は感謝しています。

いわゆるＬｅａｄというグループがあって、それに当てはめて脚本を書いたということではなくて、本があって、それを彼らが体当たりでやってくれたということですね。

−　そうですね、皆さん特徴があって映画に溶け込んでいて違和感は無かったですね

−　壇ふみさんは、映画の出演を快く引き受けてくれましたか

望月　ええ、楽しくやってましたね。

友達の俳優さんに「私こんど『かまち』にでるの、どんな役だと想う？」「お母さん？」と言はれ、「恋人役をやるの」と言って「えー」と言われたと話していました。

壇さんは、エッセイとか小説も書いていて忙しいのですが、演じるのも好きで出演できて良かったと言ってくれました。私は壇さんには感謝しています。

基本的には、子供たちの話の中で、彼女がまとめ役をやってくれると想っていましたから。

−　私などは、壇さんと聞くとそれだけで安心してしまう面もあって、昔からなじみのある女優さんなので

望月　壇さんの役は若い時の子役も含めて、彼女がヒロインのようなものですから。彼女が主役のようなものじゃないかなー。

−　キーマンですね。

望月　現代も過去も出ているのは彼女だけですから。

石原さんもどちらにも出てるけど、かまちくんは現代には出てこない、詩が出てくるだけで、実在して出てくるのは壇さんと石原さんだけ。壇さんは教え子たちと交流があったりするので、この映画の巫女的存在です。

望月　あとは『恋極道』の子役の大沢あかねさんが大人になって、この映画では木下みゆき役で出ています。

−　子役の方たちは今回が映画が初めての方が多かったと想いますが、本読みから入っていったのですか

望月　子供たちとは、慣れるようにリハーサルをやりました。

それぞれのシーンをグループに分けて広い場所でやってもらって話し合ってから、また３０分後にまた見に行ったりと、そのグループを廻りながらリハーサルをやりました。

−　監督の指示に反発する方とか無かったですか

望月　子供たちもいっぱい、いっぱいだから、そんな暇、ゆとりは無いですね。

本人たちが精一杯ということで、やらなきゃという雰囲気でした。

−　今回の撮影で苦労した所はどんなところでしたか。

望月　特に苦労はないですが、実在の人物の話なので、縁のある方が多く、親も含めたくさんいるということです。その方たちは自分のかまち像というものを持っているので「かまちはそんなんじゃない」とか「実はこうだったとか」ある訳で、それは悪いことではなく大切なことです。

だけど、実際映画にする時は、違うかまち像を創る訳で、意見は参考にしますが、そのまま創れば映画になるかというと違うし、一人一人のかまち像は違う訳だから、縁のある方々は自分のかまち像があるけど、私には私のかまち像があるからと、それを納得してもらうことが一番大変でしたね。

今まで色々なメディアが、かまちくんを取り上げていますが、これが最終形じゃないんだと。決定版として映画を撮るのではなく、２時間でその人の全てを描ける訳が無いので、これが入口になって、Ｌｅａｄのファンの方や若い方が観に来たりして、かまちってなんだろうとか、かまちの詩を読んでみたいとか想ってくれたら良いと、これは入口なんだと想ってくださいとずっと言ってきましたね。

−　今回の映画は望月監督の作品としては異色だし、凄い映画を撮ったなと感じました。

望月　青春映画は撮りたかったし、楽しかったですね。

私も日本映画学校で先生をやっていたことがあって、４年くらい教えました。18歳くらいの方のいますし、私も自分の中で、近くに若者がいると若者への興味の沸いて、若者の映画が撮れないかという想いもありましたが、なかなか私はヤクザものとかエッチなものが多いので、撮れるタイミングが無かった。この映画をやってみないかと話があったときは、

本当に良かったと想いました。

本当に自分が望んでいた時なので、少年殺人や、ナイフ少年がいたり、援交の問題があったりと子供たちが不幸になる話が次々と出てきている。それを見ている時に、大人の映画に子供が出てきて何を考えているか判らない、爬虫類みたいに描いていて、突然キレるように描かれているけど、そんな事は私は信じられないし、逆に大人は判ってくれないとダダをこねているだけとも想えないし、実際僕が考えている子供たちというのは、普通の人間だと、爬虫類でも衝動動物でもない、可愛いだけでもない。

私の想いは、等身大の恋をし悩む男の子や女の子を撮れたら良いなという想いがありました。

−　この後の作品でまた青春映画を撮りたいと想っていますか

望月　青春映画も撮りたいですね、でもエッチなのもヤクザ映画も撮りたい。

改心した訳ではないので(笑)、ひとつ撮れる映画が増えて良かったと想っています。

−　今暖めている原作などはありますか

望月　原作じゃないけど、佐治乾さん（『南極物語』のシナリオライター）が書いてくれた作品で、なんとか映画化したいと動いています。