鹿島勤監督インタビュー(1)

新沼：『いちご同盟』の資料によると、お生まれは東京ですか？

鹿島：えぇ、そうです。

新沼：目黒の方で、そこが出身ですか？

鹿島：生まれてから30数年まで家はあったんですが、23の時に飛び出したっていうか

新沼：小さい頃から映画はお好きだったんですか？

鹿島：自分でも、よくわからないっていうのが正直なところですかねぇ。映画自体は、小学校５年生くらいの時から、渋谷にあった前線座に。あの当時100円だったと思う、２階が150円だったと思う。
　007とかマカロニウェスタンの２本立てを、なんとなくなんだけど日曜日に。月２回ぐらい行ってたかなぁ。
　だから今、昔観たんだけど題名が覚えてなくて友達に観せられたりすると「これ、観たことあるなぁ」という映画がけっこうあります。
　それと、兄貴がね（９歳離れているんだけど）映画ファンだったんですよ、特にオードリー・ヘップバーンとか、そこから入って無理矢理連れて行かれて観たのかナ。兄貴と一緒に観たのはね、小学校の低学年の頃なのでほとんど断片的にしか覚えてなくって、でもあの頃のハリウッド映画の大作はほとんど観てるはずなんです。

新沼：いつ頃から映画界に？

鹿島：僕は、最初やっぱりテレビの時代でしたから、テレビに行こうと思っていたんだけど、先にフィルムの方の「東京映画」っていうところにアルバイトで行っちゃって、居心地が単純によかったっていう…。先輩達は厳しかったけど。

新沼：「東京映画」っていうと東宝の傘下の？

鹿島：そうそう、千歳船橋。

新沼：監督がお入りになった時は、まだあったんですね。

鹿島：あったんですよ、僕が丁度入ってっていうか撮影所に行って２年ぐらいしてなくなったんです。僕は、円谷のテレビをやっていたんで。
　まぁ、みんな50〜60歳くらいの人が多くて一番若くても30歳後半、20代なんと録音部の助手くらいしかいなくて、めちゃめちゃ厳しかった分、仕事が終わるとえらくやさしくされて…、それで何となく居続けちゃったんです。

新沼：高校？それとも大学を出てから？

鹿島：高校ですね、専門学校に行ったんですが何かつまんなくて…、そういう意味でいうと今のフリーターの人と一緒で目標がなかったっていうのかな、何がやりたいっていうのが…、ただサラリーマンにはなりたくなかっただけで。
　たまたま撮影所にアルバイトに行ったら、けっこう面白くて。映画を…行く末監督になるなんてその時は全然思ってなくて。最初、美術でアルバイトに入って大映京都の神田さんの下で仕事してたんです、それでかわいがられて（先輩いっぱいいたんだけど）その後、『日本人のへそ』（ATG）で須川さんの作品に僕を連れて行くっていって（僕と二人でね）。僕は、４ヶ月目くらいでアルバイトにケがはえたようなもんだったのに現場ひとりでやらされて、そのあと『曽根崎心中』と大島さんの『戦場のメリークリスマス』をやるっていって一緒に連れて行くって言われたんだけど、美術関係っていうのはもともとそっちの才能を自分があると思っていなかったし“このままやってもなぁ面白いけど…”で離れて演出部で助監督やってみようかと思ってなったんですよ。
　その時も監督になるっていう特別な思いっていうか考えはなかったです。そういう意味では、場当り的に生きてきたっていう。

新沼：最初から１本契約のフリーという感じで？

鹿島：そうですね、たまたま実家が東京だったっていうことが、あまりそういうことを考えなくてよかったんだよね、家賃がどうのとか、僕は末っ子だったんで親もあんまりそういうことにギャーギャー言わなかったってこともあって。
　経済的な事、結婚してもあんまり考えなかったなぁ、子供が生まれて初めて考えなきゃって、最近は非常に考えるようになったけど20〜30代の頃はお金の事なんて考えたことなかった。

新沼：今回あらためて監督の作品を観させてもらって、優しい性格だなぁって、もちろん子供を題材とした作品が多いっていうのもあるんですけど視点が優しいなぁって感じで。たとえば、役者さんも常連メンバーいっぱい出てきますよね。市川勇さん、あの方なんか『いちご同盟』でお医者さんやっていて『静かなるドン』ではコメディーリリーフ的な…。

鹿島：そうなんですよね、新しい人達と出会わなきゃいけないという気持ちもあるんだけど、つい…。我が家の家訓がね、親父もそう言われてたらしいんだけど、縁を大事にしろってずっと言われてて、そういうのが何かの縁かなって思うので。だからあんまり仕事ウンヌンというのに関係なく動いちゃってるとこがあると思うんですよね。

新沼：ちょっともどりますが、いつ頃チーフになられたんですか？

鹿島：最初にチーフになったのは、僕は偶然早くて、高橋洋子が撮った『雨が好き』で先輩が監督補になんなきゃいけなくて途中でチーフになれって話で…あの時24歳だったかなぁ、チーフになっちゃってテレビも何本かチーフでやったんですけどチーフっていうのは政治的な事をしなくちゃいけなくて現場に没頭出来ないんで若かった分、何か面白くないなっていう気がして。１年半くらいやったのかなぁそれでも、でチー フ辞めたって言ってセカンドやるって（笑）

新沼：やりずらいんじゃないんですか？チーフやった人が…

鹿島：でも若かったから年が。